どうなれば成功なのか?【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第26回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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どうなれば成功なのか?【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第26回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第26回

 

【現在の職業は修理屋】

 

 最近の工作の80%は修理である。古くて半分壊れているおもちゃを長年買い集めてきたので、これらを倉庫から引っ張り出しては、分解し、なんとか機能が復活するまで修復している。新たに部品を作らないといけない場合も多いけれど、なんともならないというものはない。なんとかはなる。生き物と違って、人工物は必ず修理して復活できる。大部分が壊れているときは、その大部分を作り直せば良いだけのこと。

 人間の場合はこうはいかない。自然に治るものもあるが、そうはいかないときは、人工物を体内に入れたり、あるいは移植しかない。たとえそれをしても、寿命が少し延びるだけで、いつか死ぬことに変わりはない。躰のすべてを機械にしてしまう以外に、永遠に生きることはできないし、それが可能になったとしても、「生きている」の定義が問題になるだろう。

 壊れた機械を直す行為が面白いのは、どうしてなのかな、といつも考える。壊してしまうよりは、直す方がずっと面白い。これは、生き物の本能だろうか? もしかして、「生きる」とは「直す」という行為の集積だろうか?

 

芝生の近くに栗の樹が1本あって、8月中旬から毬栗を落とし始めている。犬たちが踏まないように、気づいたら拾って、デッキの手すりに並べる。だいたい、これが1日分。もう少ししたら、この10倍は落ちるようになる。

 

文:森博嗣

 

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「無事」を重ねることが、人生の成功である。少し気をつけていれば、誰でもできる。ときどき予期せぬ不運が襲ってきても、また少しずつ無事を重ねて挽回していけば良い。勝たなくても良い。負けても良い。またの機会を待てることこそが、成功の価値なのである。(第35回「充実した人生に唯一必要なもの」より抜粋)

 

◉人生はプログラミング◉水を差しにくい社会◉話し上手と書き上手

◉老人になっても社会人である◉余計なものを持つことの価値

◉気持ちという質量◉「潔癖社会」純度上昇中◉ジェネラリストは存在しない?

◉どうなれば成功なのか?◉適度な自己中のすすめ◉アイデアを思いつける人

◉思いつきの手法◉新しい価値は無駄から生まれる◉頭は知識で肥満になる

◉楽しければそれで良いのか?◉効率か快適か、それが問題だ

◉自己利益が最重要な方針◉作るために必要なこと

◉一人でいることは、自由の象徴◉充実した人生に唯一必要なもの

◉AIが活躍する未来って?◉的確な質問をする能力

◉ネットのモラルはこれから◉フィクションを楽しむ条件

◉いつ死んでも良い生き方とは etc.

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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